ドキドキしちゃう

ダメな人の自己愛ドライブレコーダー

世界のネカフェから  ブログのメイン。管理人の見た世界の不条理。
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【日記】引っ越しをする②

もとの部屋にのこっていたエアコンの処分についてもようやく済ませた。何もない部屋でスマホで調べながらエアコンの排水ホースやら室外機やらと格闘して、でもそれも意外に一時間もしないでなんとか搬出まで出来ることになった。室外機だけは重すぎてひとりでは動かせなかったので知り合いに手伝いに来てもらった。業者に頼んだら一万円かかると言われたが、ケーズデンキに持ち込んだので処分費は二千円しないで済んだ。明日は八千円のぜいたくをしにいこう、自分の中で経済を回す行為は節約した意味が全くなくなるからナンセンスとしかいえないから遊び。

そのほかにも自分で運ぶものがいくつか残してあったので、車で往復した。物が散乱していてとてもおそろしいような状態だけれども、収納が豊富なのできちんと片づければ見違えるはずだ。台所もうんと広くなった。
大きすぎて分不相応だと思っていたスピーカーも新しい広い部屋の中ではしっくり収まるような気がした。どう配置したらいいのか研究しないとならない。
いいことづくめではない、トイレは入る度に人権について考えてしまうくらいの恐ろしい狭さだし、何より隣にひとが住んでいるので生活するにあたって完全にいままで自分に欠けていた配慮というものを思い出さなくてはならない。つまり私はいままで自由にのびのびと暮らしていた。真夜中に掃除機をかけようがスピーカーを鳴らそうが文句をいうやつなんて誰もいなかった。隣の部屋にもその隣の部屋にも上にも下にも何年たっても誰も入らなくて、そんな廃墟の優雅な生活を私は幸いに思っていた。
エレベーターもほとんど個人使用だったけれども、たまに誰か住人に会ったときにはお互い「いつまでここから逃げ出さないか」で盛り上がった。
いよいよ自分が逃げ出すことになって管理人に挨拶にいったら、「ひとがいなくてあのマンションは薄気味が悪い」というようなことを言われた。生活の匂いがまったくしない部屋を何十も順番にまわっていくと気分がめいってくるそうだ。部屋はひとが住むためにあるのだからひとが住んでいない部屋というのは不条理な存在だ。カーテンをはずして誰も使わないフローリングとキッチンが並んでいる様を想像してみたら確かに私は異常な空間に暮らしていたのかもしれないと思い至った。
管理人は「ここの廊下を歩いていても、音も、声もなにもしないんだよ」と言った。

これから私が暮らす新しい部屋は隣にもひとがいて外では子供が走っていたりするのが見えた、私の暮しもまた違うスタイルになるのだろう。

最期に郵便受けをさらっていないことを思い出して管理人室の帰りにロビーに寄った。
私が愛した建物は残りの少ないひとたちもまもなく誰もいなくなって、そうして消えてなくなってしまう。重厚なコンクリートが全部灰にされてしまう姿を思い浮かべた。それとも、しかしおそらくそれともはないし、もうここには来ないだろう。
駐車場に一台だけ止まっているのが私の車だった、そのときには他にも急ぎの用事があった。

そうしてようやく引っ越しが済んだ。済んだというのはもといた部屋を引き払ったという意味だけのことで新居のほうはどうしようもないカオスなのだけれど多分一般的には引っ越しが終わったというのだろう。