ドキドキしちゃう

ダメな人の自己愛ドライブレコーダー

世界のネカフェから  ブログのメイン。管理人の見た世界の不条理。
ツイッター   ゆるふわ日記。思考回路オープンソース企画。

91年の最後/ネタバレカタルシス(走馬灯注意)

前回は鬱屈した思いをぶちまけてしまいましたがダサい補足。つまるところ、読んでくれるだけでも嬉しいってことです。もちろん共感されたら嬉しいし、星がつく度に喜びでオロオロ、引用とかコメントなんてあったら更に舞い上がってます。共感でも反対でも同じくらい嬉しいです。まだ続きますが、どうか付き合ってやってくださーい。。。
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気を取り直して前回のあらすじ:「謎は全て解けた!」一人絶叫したレモンちゃん。イミフすぎてお口ぽっかんなデニーロは放置プレイで、ひとり替え玉を注文。パスタだけど。ごめんおじさん全然わかんないんだけどあんた何言うとんのというデニーロに我らがアラサー探偵は余裕の表情で言ってやったのさ。「謎解きはディナーの後で」見たことないけど。なんだかね、リアルではまー人間関係のなんとかが沢山あってさ、僕もう疲れちゃったんだ・・・一日ブログを書いていたいんだネコの神様。

はじめから⇒ "家族の肖像" - 記事一覧 - ドキドキしちゃう

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<あらすじ書く気ないならさ、、ね、>

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水門が開いた。
目から鱗でもなんでもいいけど、どうしてわからなかったのか不思議なくらいに視界がクリアーになった。
今まで蓄積してきた記憶が、かき集めてきた記憶が証拠だった。全てのモチーフが意味を持って、映像が時系列に一直線に並び、それが一気にドミノ倒しになったみたいな感覚だった。
走馬灯、と思った。
伏線に全く気付かなかった。
簡単すぎるトリックで。
全部知っていたのに、全然わからなかった。
なんだ、ずっと思っていたとおりか。ようやく気付いた。
言葉としても事実としてもめちゃくちゃだけど、本当にそのままこんな体感。

ネタバレしたら推理小説はもう半分エピローグというのがお約束だけれど、現実世界にはそれはさすがに援用できない。次から次へと新たなストーリーが我が物顔で侵食してきて大騒ぎになる。どうにかそれを防いで冷静さを保っていないとすぐに意味不明な話が始まってしまう。くわばらくわばら。
なので、このお話はもう少し続いてしまいます。

トリックのキーワードは家族幻想と誤解。
近すぎて見えなーいっていう、本当にもうどこにでもあるありがちな話。



祖父が息を引き取ったのは、そのパスタ会談の4日後だった。

仕事中に知らない番号からの電話があった。祖父の病院からだった。
すぐに来てください。

あぁ、
まさか/やっぱり。

すみません、一時間以上かかります。
そう答えると、電話口から露骨に落胆した、それでも焦ったような声が聞こえた。
「心電図の動きが大分弱まって…あっもう止まってる…かも…」
っておいおい、それもう死んでるんじゃないスかーー!どうやったってそれ間に合わないんじゃん!だいたい、かもって何、かもって!ちゃんと画面見て!
そんなこと口に出せる筈もなく、会社のひとに謝って早退させてもらった。
脚も声もガタガタ震えて、傍目にもヤバい状態だったと思う。
パニックだったらしくて途中のコンビニでお茶を大量に買った。飲むかと思って・・・飲んだけど。
気を緩めたら涙がダダ漏れに出そうで、

こういう場合急いだら奇跡的に間に合うのだろうか、とか、
でも、もう心臓止まってるんでしょなんか急いじゃって意味あんの、とか
間に合うかなんて問題じゃない、とにかく全力で走っていくもんだろ、とか
え、そーなの、なんで?とか
それにしてもだよ、やっぱりジャズっていいよねぇーここのサックス堪らんじゃない、とか
あー忌引きになるなら関係者に挨拶メール位出してかないとダメだったじゃんバカバカバカ、とか
思いながら
生まれて初めて首都高を走った。
道は、何度も父と通った道だったから大丈夫だった。


奇跡なんか当然なかった。
蒼白で辿り着いた病室で、すぐにはカーテンの中にいれてもらえず、先週打ち合わせで入った小さな会議室に通された。
救急車を呼んでくれたお世話になっている女性と、デニーロがうなだれていた。
「ごめんなさい」
他に言葉は出て来なくて、デニーロに抱きとめられた。
「謝ることひとつもないでしょう、キーパーソンなんだろ、しっかりして」
せっかく直したメイクが全部流れてしまってうんざりした。

しばらく泣いたら落ち着いた。
この日何回目かの化粧直しにトイレに立ってから、カーテンの中に入った。

全然知らないおじいさんが横になっていた。
このひとが、わたしの祖父だったひとだ。

穏やかな最期で眠るように死んでいったんですと、その女性がいった。
ひとりでなくて、よかったと、思う。


葬儀は祖父の自宅で行うことになった。
喪主は長男である父だった。
血液検査の結果が芳しくなく、感染症のおそれがなんたらで父の外出許可は下りなかった。
母も祖父の葬儀のため走り回っていた。
父はひとりの病室でこっそりタバコに火をつけた。
当然だけど父はものすごく怒られて、隠しておいたショートホープは全部没収されてしまったそうだ。