ドキドキしちゃう

ダメな人の自己愛ドライブレコーダー

世界のネカフェから  ブログのメイン。管理人の見た世界の不条理。
ツイッター   ゆるふわ日記。思考回路オープンソース企画。

バナナクリップの流行は世界的である。

ローカル線は、面白い。

なぜって、知らないひとの私生活を覗き見ることが出来るから。あまりよろしい趣味ではないですが、どうにもやめられません。
更に面白いことに、そんな観察者である私を逆に観察してくる人間が時折出現することがあるのです。なかでも無謀な彼らは、正体不明の異邦人に話しかけることも厭いません。
今日はそんな勇者な女の子の話をします。

   ■


ウズベキスタンで電車に乗っていたときのお話です。
突然、隣の席に座った現地人のおねーちゃんが、話しかけてきたのです。単純に英語をしゃべってみたかったのでしょう。
どうみてもいわゆるひとつのピチピチギャルです。女子力の高い女子に話しかけられると、非リア負け犬根性が炸裂して完全にあうあうあうとなる私ですが、必死でコミュ障がばれないように取り繕います。一般に、生物は同種族の同性と出会った時に一番緊張が高まります。自己の生殖競争に直接関わってくるからです。ヒトニラミで上位下位関係が決まる緊張の一瞬。地元じゃ勝ち知らずな私ですが、幸い、国籍や言語や文化の違いという煙幕を武器に、おそらく私のコミュ障もそこまでばれないですむ筈です。


あれっこいつ外人の癖にたいして英語しゃべれないぞという悲しい事実が露わになっても、彼女は私へ無謀にもコミュニケーションを図ろうとしてきました。まさに勇者です。
一通り自己紹介が終わった後にも、そうしてなごやかにガールズトークに花をさかせていたのですが。

「ね、日本語で、私の名前書いてよ!」
出ーたよ。
全く問題ない、いーよいーよなんでも買ってあげるよ。
ノートにその子のお名前「ナルギザ」と書いて、一文字ずつアルファベットも併記して渡すと、意外にも不満そうなお顔。
怒った顔も女子力高くて負け意識でいっぱいに…
でもなんで怒るの…?文化の違い…?
「ちゃんと日本の文字で書いて!」
「書いたよ、これだよ、あってるよ、うん、あってる」
「違うよね、ごまかさないで!」
彼女のいう日本の文字がすなわちKANJIだということがなかなか伝わらず、ちょっとした押し問答はありましたが、
あー漢字ね、漢字、
そういえば聞いた事あるよこういうことがあるって、ものの本に載っていたわ。
漢字ね、そーね、、、
ナルギザちゃん、あんたは自分でそのKANJIを書きたいっていうんだよな、でなけりゃ、私が車窓を眺めてる間しばらく大人しく何か書いていると思ったら勝手に奪っていった私の地球の歩き方から「記載例」という文字をノートに写して「これなんて読むの」とか聞かないからな。つまりなるべく簡単な漢字かつ彼女にふさわしい女子力高い美しい漢字・・・
レモンちゃんの文芸魂に火がついた。
  「成木沙」
ど、どうかな…////
ノートに、一生懸命に異国の文字を練習するナルギザちゃん。
異国の女の子(22歳)が私の教えた漢字を練習している・・・
帰ってから、旦那さんと子供に自慢するんだって・・・
なんて眩しいんだ。
年下なのに英語もペラペラでおしゃれで可愛くて結婚もしている、私から見ると全てにおいてリア充なキラキラ女子が私に漢字を教えてほしいと・・・
かわいいい・・・超いい子だ好きになっちゃう・・・ごめんサンズイって意外にバランスのとり方が難しいの知らなかったわ・・・「成」も画数少ないだけで難しすぎだったわ・・・あああごめんねごめんねもっとちゃんと考えればよかった・・・

結構な格闘の末、彼女は三文字をマスターした。
「ありがとう!!」
すんごいキラキラした目でお礼を言われて、もうどうしていいかわからなかった。
私も嬉しい!喜んでもらえてすごく嬉しい!

「息子の名前も書いてみたいな!」
私は異文化コミュニケーションが成立した喜びに舞い上がっていた。
「はいよろこんで!」

「フェルズベックっていうの」
フェ・・・フェル・・・

レモンちゃんの文芸魂は、

やったよ、私は頑張って息子さんの名前の漢字も考案しました。暴走族風の5文字を。ここでは重要ではないので書きませんけど、
そのときです、自分がどれだけ無力な存在か実感させられたのは。今でも、ベストな回答は出せていません。

何の気なしに、それかわいーねって言った髪留めは、今も私の部屋にある。
こんなギャルっぽいの使えないよぅ。


バナナクリップの流行は世界的です。

 

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<このあと隠し撮りがバレて怒られる>