空想「アナと雪の女王」(ジブリがいっぱい)
※はじめに
ディズニー映画は見てません。感想ブログ系列も徹底的に避けてきましたので、内容もほとんど知りません。たまたま映画館でこの映画の予告編を見たところそれだけで無性に気分が落ち込んでしまったので、仮にこれがどういう話だったら私は落ち込まないで済んだのだろうかと想像してみました。そのためまったくネタバレは含みませんが、どうしようもないので以下は隠します。
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昔、エルサという普通の女の子がいた。
エルサは高い塔の上で日夜鳥の観察に勤しんでいた。鳥は自由だ。どこまでもどこまでも、飛んで行ける。
そんなある日エルサに特殊能力「雪化」の才能が開花する。
歩いているだけで経験値は勝手にたまり、雪化能力のレベルも自然に上がっていった。しかし、それは力の強さと引き換えにコントロールの難易度の高いとんでもないワザだった。
次々に目の前のものを雪像にかえてしまうエルサ。どうしよう、とまんない、とまんない・・・あとひとつだけ、あとひとつだけでやめるから!
こうしてうっかり依存症にはまった結果、薔薇もエメラルドも悪い人もやさしいあの人もみんな雪像になってしまった。
心配した両親の強い勧めもあり病院にも何回か行ったが、脳を検査しても特に何も異常はなく、原因は不明。その上何しろ昔のことなので医者も精神的な病理については知見が足りず、「性格の問題じゃないですか。はっきりいって甘えですよね」などと言われてしまう始末。性格も何も、問題は触った相手が勝手に雪になってしまうことであると散々言っているのに、誰も彼女の気持ちなんかわかってくれないのだった。
正直いってエルサはだんだんどうでもよくなっていた。むしろ楽しくなってきた。これ、いいじゃん!わたしは王女様、雪の王国を作り上げるために生まれてきたの・・・こんなトンデモ発想までしちゃったりしていた。
エルサの妄想はともかく能力は本物だったので、王国は本当に雪に包まれてしまった。
特筆すべき事項として、ある夜、キレた彼女が勢い余って雪のお城をワンコーラスのうちに建立したエピソードがある。現在彼女は建築の守護聖人として特に北欧三国においてよく親しまれている。
そうしてエルサは本当にひとりになった。
もう誰も彼女の邪魔をするものはなかった。彼女はお気に入りの唄を歌って暮らしていた。そう、しばらくは。
しばらくのち、彼女はこの世界には自分がたった一人であると考えるようになった。それはある意味で確かな事実であった。孤独だった。
誰か話し相手が欲しいと思ったが、王国はもう雪の下で掘り起こすのも難しい状態だった。
そこにあらわれたのが氷の王子である。二人は似た者同士ということもあり、すぐに意気投合することとなった。
「よう どくじゃの ひめ ひさしぶりだな」
「わたしの おっとに なろうと いうのか」
二人の愛は永遠かと思われた。「リア充爆発しろ!!」といって石を投げられたこともあったが、二人は隕石が落ちたことにも気づかない位にもうお互いしか目にはいらなくなっていた。そのせいで恐竜が絶滅したかもしれなかったが、世界は二人のためにあった。
二人の愛は全地球を覆った。
それは現在から見て過去10億年のなかでおそらくもっとも厳しいものであり、氷が赤道まで覆いつくしスノーボールアース(全球凍結)を作り出した。
盲目的な愛によって全てが凍りつくと、意外に二人はあっさり正気に戻ってしまった。お互いの愛はそのまま憎悪に反転し、小さなわだかまりと同じシーンを繰り返すかのようなすれ違いが積み重なり、遂に王子の浮気が決定打となった。
特にウィキリークスの暗躍によって世間の知るところとなったこの発言はとてもよくなかった。エルサの女友達は大喜びにも似た勇ましい表現で「人間性」という言葉まで使った上で別れを勧めてきた。支持率も一気に1ケタ代まで落ちてしまった。
友達の勧めがなくったって、とエルサは考えた。王子の言う事はいつも適当に都合よく彩られた夢ばかり、その癖なんにもしないじゃない信用ならないわ。
「私は違う」
ちゃんと、地に足のついた生活を送らなければ、、、
そう、タラの大地が私にはついているわ!
二人は別れを決意した。
「私は北極で、エルサは南極で生きよう。会いにいくよ。行けたら行くよ。」
どこまでも浮ついた王子の虚言はもうエルサには届かなかった。
そんなわけで、北極には大陸がないのです。
王子のストーカー化を防ぐため、エルサは妹に間に入ってもらって、なんとか南に辿り着くことができた。
そうしてエルサは南極の女王としてついに安住の地を得たと思った。
新しい世界、ここが私の生きる道。
そうかしら、私の望みは、本当の私は・・・
そう、私は小さいころから鳥が好きだったの、ずっと、飛んで行かないで、ずっと側にいてほしかったのに・・・こんなセンチな気分になる度にエルサは南極に住む鳥をつかまえて飛べないように改造をほどこしていった。後のペンギンである。なんであんなこと、まあ意外とかわいくなったし、まあいいやとエルサは思った。
平和なときは永遠にも思われた。
(永遠の擬人像)
どのくらいの月日がたったのであろうか。
アナが、ついに、覚醒した。
「私はおねえちゃんの後始末ばかりじゃない!」
ちょっと待ってよとエルサは諭したが、アナは聞く耳を持たなかった。
残念でしたわね、お姉ちゃんが南極で鳥と遊んでいる間に、どれだけ私が修業したとお思い?私はもう、お姉ちゃん、いえ、あなたを超えてしまったの。
素直でいい子だったアナがこんな表情をするなんて・・・
エルサは正直アナの豹変ぶりにどちらかというと引いてしまっていたので深く考えなかったが、夏の女王と化していたアナの魔力は確かに強く、なんだかすごく温暖化してきちゃったような気がしていた。
やばい、このおんな本気だ!
それは史上最悪の姉妹喧嘩であった。
エルサはしかし戦からずいぶんと離れた暮らしを送っていたせいで暗殺者としての勘が鈍り、欧州の海に放つ!草の者は何を思ったかクジラにしか興味を持たずに暴走、北米大陸に放つ!草の者も、まぬけなブッシュに情報戦で惨敗する有様であった。
「これからはITの時代ね・・・」
幸か不幸かこのことがきっかけでエルサはラインも始めるようになった。ネットの広大さは南極をしのいだ。早速冥界で気の合う人が見つかった。彼はジパングという国出身崇徳上皇と名乗った。
ずっと平家への恨みを忘れない一途さにエルサは胸を打たれた。別に恋愛対象ではなかったが、ふたりは女子会的なノリのトークで盛り上がり、毎晩チャットを楽しむまでになった。ある日、彼らはオフ会の中で出会う。初めて見る彼の素顔。新しい日々の始まり。
いつしか二人は周囲からも「付き合っちゃいなよ」とからかわれるくらいの関係になっていた。
エルサがちゃらちゃらしている間に青春を奪われたアナの怒りは、ルサンチマンとなり捲土重来レベルとなりもう誰にも止められないものとなった。いまも、着々と世界は夏に向けて変わろうとしている。
アナは今も、われわれにメッセージを送り続けているのだ。
私、アナ。
今、あなたの後ろにいるの・・・
(エンドロール)