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ドキドキしちゃう

ダメな人の自己愛ドライブレコーダー

世界のネカフェから  ブログのメイン。管理人の見た世界の不条理。
ツイッター   ゆるふわ日記。思考回路オープンソース企画。

【イラン】羊からの挑戦状

テヘランの街角。
私は相当後悔していた。なんだってこんな店に入ってしまったんだ。
それはイランで過ごせる最後の夜、大事な大事な最後の晩餐だったはずなのに。
道すがら、店の中からおいでおいでされた私、もといカモはあっさりその怪しげな食堂に入ってしまったのだった。

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入り口にあったのは羊の頭蓋骨が五右衛門風呂中の大鍋。イランの街ならどこにでもあるアイコンだ。ここで提供されるのは、キャレ・パチェといって、羊の頭部及び膝下――すなわち肉らしい美味しい部位をさらったあとの残りの部分――を煮込みましたという庶民の味方的な料理だ。
なおかつ、私はその羊料理について未体験ではなかった。

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このたった2日前別の街で食べたときの写真が ↑ コレ。
頬肉、目玉周辺部位、目玉、脳みそ、脛の関節や脚部の軟骨・・・
ぐろい。ぐろいよ。コラーゲンだよ。

そもそも私はこういう気持ち悪い系料理がダメなのだ。
モツも苦手。基本的には好き嫌いはないことにしているし、モツ鍋屋にいけば人の目を気にして美味しい~☆とにっこりおかわりまでするので私がモツが苦手だという事実を知ってる人間はあんまりいない、食べれるよ、食べれるけど、モツはほんとは苦手なんだ。ダメなんだ。モツ鍋屋はみんなが大好きだから仕方なくいくところであって、断じておひとりさまの舞台にしていい場所じゃない、なぜならラーメンじゃないからだ。

じゃーどうして羊のグロイ部分しか扱わない食堂に私はわざわざ入ったのか?
街が違ったからもしかして美味しいかも
そう、思ってしまったんだ、ってあんたどんだけ学習能力低いのよ、、バカ!バカ!

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テヘランのこの食堂で出されたのは乳白色の羊ガラ骨スープだったけれどもそれはますます独特の風味を増して、なにやらエンガワのような部位はグニグニと口の中でグロテスクに潰れた。
まずい。
酸っぱまずい。
ごめんだけどゲロだ。ゲロみたいなんだ。


涙目だった。
しかし出された食事を残すのは犯罪だし、手をつけないのは人間失格だ。
異邦人という免罪符を用いれば、チャレンジした後に仕方なく口にあわないと撤退することにもぎりぎり情状酌量の余地がある、しかしそれは少しでも努力した形跡を残した場合の話だ、、、
あと1センチ皿からスープが減ったらリタイアしよう、と青ざめながらノロノロとスプーンをスープに浸したりやめたりする。うう、皿がでかくて飲んでも飲んでも一向に減らない・・・と、カウンターからおじさんがなにか皿を持ってきた。

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な、なんですかこれは!頼んでませんよ!私頼んでませんよ!
おじさんは笑って何かペルシャ語で話しかけてくる。唯一はっきりしていたことは「お前これ食ってみろ」だ。
スープでこんだけ苦労してるのに、、
なんですか!
出されたら食べなきゃいけなくなっちゃうじゃないですか!
これ一体なんなんですか!


へー、羊の舌。


あー、なるほどねぇ、牛タンだともとが大きいすぎて普通のハムみたいな見た目の焼肉になりますが、羊の舌だと一頭分の舌がちゃんと一人前の皿に乗るサイズ、ですから構造までよくわかるんですね。付け根の筋肉と舌本体の筋肉はこうして繋がって、、
初めて見ますがわかりやすい!

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羊の舌。へー。

 

リアルだよおお~~やだあああ
気持ち悪いよおおおおお!
気持ち悪い!
気持ち悪いいいい!

見ると、食堂の中はおっさんばっかりで、みんな外国人が呆然と困っているのをみてにやにやにやにやしている。この変態ども、、これは!出された皿は食べなきゃいけないという日本人の習性を利用した、これはいじめですよ!いじめ!くそう、食えっていうなら食ってやるよ!
ムカつきながら、意を決して解してみる。い、いただきまs

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うぅっ、ほどける繊維がなんともそのまま筋繊維らしさだよ、う、なんかジュワッ出た、、うげげーっと口にいれてみると、おくちの中でとろりと溶ける。い、意外に味は大丈夫、、かも、、、
レモンをかけてみるとクセもかなり緩和され、美味しいかまずいかで言えばなんとか美味しいに軍配があがらなくもない、いいか自分よ、世界の食べ物はうまいとまずいの二種類しかない、見るな、感じろ、決してまずくはないだろうこの皿は、すなわち美味しい食べ物だ!
柔らかくってジューシー!
羊のタンはおいしい!
おいしい!

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おじさんに大量のレモンをもらい、味をごまかして私は羊タン皿を完食した。羊タンに附帯してきた黄色にすきとおった羊スープもレモンの助けは借りたが全部飲みきった。
村上春樹の考えた墓碑銘を思い出す。「少なくとも最後まで歩かなかった」だったっけ。頑張った。私は頑張ったよ。
おじさんはほとんど手をつけられなかった白濁スープのほうは無理しなくていいよと言ってくれた。
なんて優しいんだ、、ジェスチャーだったから本当のところは知らないけど。

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ありがとうおじさん。



店を出て少々脱力状態で歩いていると後ろから興奮したイラン人が追いかけてきた。
「おい、おまえ、ザボーン食ってただろ」
「ザボーン?羊タンのこと?」
「そうそう、俺いま見てたぜ、やるじゃねえか!」
やっぱりなんか私は半分面白ネタの見世物にされてたんだ、、、
彼は馴れ馴れしく私の肩をバンバンと叩くと、バアイと言って嬉しそうに去っていった。あれだろ、絶対なんか賭けたりしてただろ・・・

多分、あれだ。
外国人が現地のキワモノを食べた反応というものはそれだけで面白いんだ。
食べれても食べられなくても別にいいのだ。
食べられれば、仲間意識を共有できた気分になれるし、チャレンジの結果食べられなければ、現地人=すごい  外国人=ダメ という優越感が得られる。
新入りが仲間と認められるどうかのイニシエーション。
中を覗き込んでしまった以上、受けてたつのが礼儀というものだよな、と思った。虫なら案外イケるクチだし。カエルは流石に無理だけど。


お口直し、もとい、デザートに買ったメロンジュースをすすりながら、テヘランの駅まで預けていた荷物を取りに行く。
「一応食べようとはしていた」そう書いてもらおう。墓碑はちょっと・・・そうだ、紹介文。ミクシーの紹介文にそう書いてもらおう。荷物預けの時間に遅刻して延滞金を巻きあげられたけど、それなりに満足してから私はイランを出る国際バスに乗った。

 

⇒Tips レモンちゃんのネカフェから

<ご当地料理@イラン ~ キャレ・パチェ ~> 

羊のキャレ(頭)とパチェ(膝から下)を煮込んだ料理。専門の食堂でどうぞ。コラーゲンと油がたっぷり。スタミナがつくらしいです。ご予算は定食600円位から。どの食堂の中にもおっさんしかいません。若者はサンドイッチ屋さんにいます。