エピローグ (父と子)
はじめから ⇒ "家族の肖像" - 記事一覧 - ドキドキしちゃう
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責任の裏の意味は自由。
誰かのことを思うとき、自分について考えるとき、私は私の責任について考えるようになった。これから何をするのも、これまでの記憶をどうとらえるかも自分の自由だし、それは毎回大きなバクチで。そして、掛け金は大きなほうが楽しい。掛け金の金額は考えた時間。
誰が幸せだったかなんて私は知らない。そう思っている自分がそこそこ幸せものだとだけ思っていればそれで十分だ。
父は穏やかに逝きました
なんて口が裂けても言えない私はしばらくこのままなんだろう。どうせなら、密告者ではなくて、正々堂々と告発者でいようと思う。
頭の中でマイルスデイビスの So What? がずっと鳴ってる。
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父の遺体が安置してあった部屋に、遺骨がまだ置いてある。
お墓について決めかねているので、一年位そのままでよろしいと家族で決めた。
父の葬儀には、たくさんの友人が来た。私に友達がいないのは俺に似たんだなと言っていたのに、たくさんの友人が来た。嘘つき。たくさん、いるじゃん。みんな泣いていた。
自分はいい加減だってよく父は言っていた。そこも私によく似ている、と。
お線香をあげに来てくださった職場の方は、父はまじめすぎたのだ、と言った。やっぱり嘘つきだったんだと思った。
父の訃報を知ったひとから沢山のお悔やみが届いた。
大学時代の部活の後輩というひとからは丁寧に引き延ばした父の若い日の写真が届いた。
どうみてもバカな大学生が写っていた。
おとーさん・・・
こ、これはどうみても非リアだよ・・・
血は争えないんだとがっくりしましたwww
まさに、幻滅。幻想の消滅。
写真の中の父はすごく楽しそうだった。
父と沢山話した日、私は一番聞きたかったことを聞いた。
「なんで、結婚なんかしたの」
こんな結婚するからこーなったんじゃないかという非難がましい聞き方だったと思う。
苦笑いしながら、父は答えてくれた。私の目を見て。
「恋、しちゃったんだよ」
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今は亡き
父
5つの文字が裏面に書かれた小さな写真がポメラの脇にある。
私と同年代のように見えるモノクロの青年が、羽織姿で頬杖をつき、ぼんやりと(若しくは緊張した面もちで)こちらを見ている。
49日法要と一緒に祖父の入骨式を行った。
祖父は、そのまた父親を幼年時代に亡くしている。
半世紀がたっても近所のひとの間に噂が残っているくらいに、舅から苛められた祖父の母。夫の死後、地域のそこそこの地主だった家を追い出され、代わりにほったて小屋を与えられて、田圃も畑もなくどうやって生計を立てていたんだろう。
私が知っていることは、その少年が学校という社会の中で神童と呼ばれていたこと。
祖父にドストエフスキーにはまっちゃってさと話をしたことがある。(ネクラなあなたには「地下室の手記 (新潮文庫)」がおすすめ!本は薄いけど中二病がそのままリアルで死にたくなるよ!)
ドストもいいけどな、と祖父は言った。ロシア文学ならツルゲーネフだ、と。
初恋という一冊は読んだことがあった。
やだ、理想主義じゃん、で、どれがおすすめなの
「父と子 (新潮文庫)」だ、と祖父は迷わず言った。あれは、すごい小説だ。
まんまじゃんw
神童と言われた祖父がどうしてもわからなかった答えが、そこに書かれていたのだろう。もとい、答えらしきもの、が。
祖父の本棚の一番上にはお約束のマルクス資本論がやっぱり全巻そろっている。きっと彼の青春の象徴。
理想主義者で、そのくせ浮気ばっかりしていた祖父。
幻滅したよ、おじーちゃん。
それは浮気じゃなくて、それはいつも本気の恋で、いっつもバカだな俺はとうちに戻ってきていたんでしょう。恋は、するものじゃなくて、落ちるものだから。理想ばっかり見てるから、ふらふらしてるから、すぐに落ちちゃうんだよ。
ずっと見ていてくれるひとがいてよかったね。恋人に看取ってもらえてよかったね。ちゃんと、私がうまいことやるから、安心してね。
って、ほんとに人のこと言えないんだけど・・・
自戒を込めて。
理想主義も、ほどほどに。
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記憶はストーリーなんだと思う。
私と父と祖父に流れる大河なお話は、こんな感じ。
誤解と勘違い、見当はずれの正義感その他諸々が入り乱れてめちゃくちゃなストーリーだったけれど、まだどんなレトリックが隠れているのかさっぱりわからないけれど、とりあえずはこんな感じ。
父と母、母と私、母と妹、父と妹、妹と私にそれぞれストーリーがある。全部交錯しながら、全然全く違うお話がある。
母の話はしない。妹の話も。
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父と、祖父の家に様子を見に行くときは、だいたい車でジェフベックをかけていた。
こーいうの、好き。歌詞が入っていると、なんか嫌で・・・ほんとに最近全然だめなんだ、と私は言った。
そーいうときはあるもんだ、と父は返した。
ちっとも共感も慰めもくれない冷たいジャズのフレーズと一緒に、またあのおっさんの声が聞こえる。
で?
あんたは、どーすんの?
わたし?ブログ書くよ。その前に、カレーでも作ろうかな。
So What by.Miles Davis - YouTube
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いかがでしたでしょうか。
これで、電気レモンのなんとか劇場はお別れの時間です。
あとがきもあるのですが、いったん、大好きな筋少で締めようと思います。
赤裸々とネタにしてしまった父へ。
リルカの葬列(youtubeがないことに衝撃を隠せない)
愛する者が死んだときには自殺しなけりゃーなりません
それでもなおもながらえることとなったら
喜びすぎず悲しみすぎず
テンポ正しくブログを書きましょう
僕はブログにかきだしてみた
おとーさん みんな星をくれたよ
さよなら
<さよなら かける さん>
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ご静聴ありがとうございましたーーーーーー!
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幕引きは劇場だけで、あとがきののち本来の姿(ゆるい日記系ブログ)に戻ります、わかりにくくてごめんなさいー